中国人のフォロワーさんに教えてもらった
拙著『中国抗日ドラマ読本』出版後、台湾香港はもとより、在日中国人の方、またVPNを通り抜けて中国本土からツイッターやfacebookのフォロワーになってくれる方もいてネタ探しがしやすくなった。そんな折、九州に住んでいるという在日中国人の方とやりとりをしていて、これは絶対面白いから見るべきだという抗日ドラマを教えてもらった。
それが今回紹介する『地下交通站』という作品だ、2006年制作と10年以上前の作品となるため、4:3で画質は悪いが、話の内容はタイトルにあるように中国語が分かれば大笑い、中国語が分からなくても多少は笑えるというコメディである。アメドラの『ビッグバンセオリー』のような1話完結のシットコム型式のドラマだ、なので笑いポイントには笑い声が入る。中国語が分からなくても多少は笑えるというのは、そういったシットコム型式というあまり言語の壁を意識させない作りというのが大きく影響している。また屋外ロケではなくスタジオ撮影なので絵面はTVで吉本新喜劇やドリフのコントを見ているような感じであるから日本人にも親しみやすいフォーマットだ。
そういうわけで、血なまぐさい戦闘シーンもなく、ギャグ連発なので抗日ドラマ入門には最適な作品だと思う。
登場人物紹介
『地下交通站』とは秘密アジトという意味だ。冀中の河北名物ロバ料理を出す定食屋を舞台に、そこへ潜入した共産党員と日本軍、保安隊、皇協軍、そしてゲストが繰り広げるコメディ。悪役も日本軍大佐ならちょび髭デブと定番の格好だがどこか憎めないお茶目さがある。普通の抗日ドラマでは嫌われ者の漢奸もキャラが立っていて美味しいところを持っていくほど。おもしろいのは動きが大げさな黒藤中佐と、黒藤といつも漫才になる贾隊長。フォロワーさんに教えてもらったが、漢奸の贾隊長はこのドラマにおいて中国で一番人気のキャラだそうだ。正義の八路軍が一番人気になるより、こういった脇役にスポットが当たるのもいい話である。
毎回豪華ゲスト登場
ゲストに登場する俳優は、日本では全く知られていないが、どこか中国ドラマや映画で見たことのあるような有名俳優だ。拙著『中国抗日ドラマ読本』で紹介した作品に登場した俳優も多数出演している。
連環画のようなイントロ
中国には絵本と漫画の中間のような本、連環画がある。漫画同様、子供向けや大人の暇つぶし用の軽い読み物だ。三国志、水滸伝といった古典、そして紅色経典といわれる抗日戦などが題材となっている。
そういえばお土産用のトランプにもこのような絵のものがある。北京や上海の観光地のお土産屋で日本のAV女優のトランプと一緒に売っている。筆者も小沢マリアなどのAV女優トランプとともに紅色経典のトランプを買ったことがある。全部コンプリートするのは大変なほどの種類がお土産屋に置いてあった。そういえばこの時帰国時税関で荷物を全部調べられAV女優トランプが見つかってしまった(笑)。もちろん中国で売っているものなので丸出しどころか裸はないトランプだったから没収は免れました。
連環画に関しては解説書も出ています
エンディングは共産劇
エンディングはステージ上の共産劇だ、学芸会や卒業式の出し物でよく演じられるものだ。なのでステージ衣装として八路軍、漢奸、日本軍の衣装も通販サイトなどで売っている。もちろん小道具の大刀やモーゼル銃なんかもある。人民解放軍の文工団や芸術部ではさらに凝った共産バレェやオペラまであるので、こういう部分はさすがに共産国らしいといえる。かつて農村で学のない農民に宣撫するプロパガンダ劇の名残であろう。
河北名物ロバ料理
最後にぜひとも皆さんに知っていただき、中国に足を運んで召し上がっていただきたいものがある。
このドラマの舞台となった定食屋の主力メニュー、ロバ料理だ。ロバの料理は日本ではないが、信州などでは馬肉料理がある。したがって料理方法は違えどほぼ似たような動物なので、馬肉料理経験者なら違和感はないと思う。
とくに「驴肉火烧」というローストビーフのように加工したロバ肉をパイ生地に挟んだサンドイッチがめちゃくちゃ美味しい。北京市内には個人経営をはじめローカルのチェーン店があるのでぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか?値段は10元前後なのでケンタッキーと同じぐらいか少し安い程度で庶民の味だ。
冀中は北京を挟んだ冀東防共自治政府の反対側